東南アジアの国、ミャンマー。民主化にむけて変革が続いたこの10年、市民は自由と発展への希望を抱き始めていた。しかし2021年2月1日、軍が再び国の支配に乗り出し、反発した民衆による大規模な抗議デモが全国各地で勃発。人々は抵抗のシンボルとして三本指を掲げて軍政に反対する声をあげるも、一人の少女の死を皮切りに軍の弾圧行為は激化し、人々の自由と平穏な暮らしは崩れていく……。
インターネットは定期的に遮断され、軍に都合が悪い情報を発信するメディアや SNS 投稿が処罰の対象となるなど、国内外に情勢を伝えることが困難な中、若手ミャンマー人作家たちが自らの匿名性を維持しながら“ミャンマー・フィルム・コレクティブ”を結成。それぞれの日常から生まれた10人の映画監督による短編映画と SNS に投稿された一般市民の記録映像をシームレスにつなぎ、抑圧された日常における切実な”一人称の物語”を紡いでいく。
世界三大映画祭であるドイツ・ベルリン国際映画祭パノラマ部門でドキュメンタリー賞&ブロンズ観客賞を受賞。軍事クーデター以降のミャンマーを舞台にした映画としては初めて国際的な場で上映され、その年のドキュメンタリーシーンで多くの注目を集めた。軍事クーデターから時間が経つにつれて、世界の話題から忘れ去られつつあるミャンマーで今なお生きる人々の“叫び”を伝えるために厳しい条件下で制作された、きわめて重要性の高い作品と言えるだろう。
眼前の光景は2021年の世界の現実なのだ
命がけの取材・撮影・記録の果てに匿名の映像が集積されている
それを見ている私とは何か
こちらもまた問われている